Progress Principle
『Progress Principle』, Tomoya HORIKI, 2018, 書籍
命と金を削る系マジシャン、堀木智也さんの最新の作品集。
一応僕も校正に関わらせていただきましたので、事前に読んでいたわけですが、その時からしゅごいしゅごい言いながら読んでました。
いや、ほんとすごいですよこの本。
視覚的にリアリティを増すトスバニッシュの詳細な解説に始まり、いくつかの技法と、マニアをしばき倒す不思議な作品群を解説しています。
特にトスバニッシュはもうこれからどんどん使われていくのではないでしょうか。言語化しにくいだろうと思われるであろう部分を上手く言葉で説明しています。映像だけじゃ絶対わからないですよね。こういうコツとか。
そしてプレミア本を（諸事情により2度）仕入れてまで調べたクレジット周りも見ものです。
そういうのが好きな方はぜひ。読んでて欲しくなるんですよね。危ないです。
……と、前書きだけで長々としてしまうので、以下に簡単に感想を置いておきます。
・Toss Vanish 2.0
視覚的な錯覚を起こさせる方法をまるっと解説しています。これだけで相当価値あります。この本の半分くらいの方がここにある気がします。
いくつかの方向など解説していますが、やはり下が一番良いでしょうね。
個人的には上方向は若干厳しいかもと感じました。
・Open Palm Subtlety
読んだだけだとどんなものかわかりにくいかもしれない。ラムゼイサトルティの強化版みたいな。実際に見るとふっしぎです。
あくまでサトルティなのでみてみて！ と見せるものではないですが、わりとじっと見てもまあ空に見えるんですよねぇ……。
・New French Pop
これも完成形が読んだだけだとわかりづらいかもしれませんね。動画をご覧ください。
一瞬でパッと消えたように見えます。目の前で見て驚きました。
文中に書いてあるように、これもどうぞと単体で見せるものではないかもしれませんが、見せても結構大丈夫です。
・Isolation Vanish
コインでは珍しい、アイソレーション的な動きからのバニッシュ。
これはあまり自分の琴線に触れなかったのですが、この動き自体は面白い。動きよりもこの動きからのバニッシュがメイン。
・Electric Sheep
「泥棒と羊」の改案。
スリーアヘッドくらいあって余裕で追えません。準備の時がやや怖い気もしますが、現象は強烈。このノートでお気に入りの１つです。不思議。
・Play It Sprout Triumph
突然のカードマジック！
コインこれだけできてカードも創作するとか卑怯では。といいたくなるナイスな手順です。
少し煩雑ですが、そこは慣れるしかありません。技術的には難しいことはなにもないです。
パターも適切な感じで僕は結構好きです。これ。
・Imaginary Thread
こういうのもあるのか！ と少し変化球な、マイム系トリックです。
過去の作品集で発表されたスタンディングコインも使っており、ちょっと楽しい手順ですね。
スタンディングコインめっちゃ好きなのですよねー。
さっと終わって少しもやもやを残す導入に適当な手順なのではないでしょうか。
・Another Colorful Wild
プロマジシャン野島伸幸氏のカラフル・ワイルドの改案。手順自体やや煩雑で、少し難し目な気はします。
個人的にはあまり好みではないですが、手順の最後が綺麗に示せるのはいい感じかも。
・Stand-up Coin Through the Table
ふしぎ！
モダンコインマジックにある、マイナーな技法にフォーカスした手順です。
余計な動作が少なく、立ってテーブルを貫通するある種新しいと言えるトリック。だと思う。
・Coin to Pocket
超ふしぎな、コインがポケットに一枚ずつ飛行する手順。
これは本当にすごい。飛行する時、ポケットに触れないでコインがポケットに落ちるんですよ。なにそれ。
一連の手順で（僕にとって）難しい技法を使っていますが、代用して簡単にすることができます。3枚の手順もこっそり実演されており、僕はこちらの方が好きですね。
このノートで一番好きな手品です。
と、いうことで、全体として大変満足できる素敵作品集でした。
難点としてはやはりこのボリュームで一冊としては高いと思われる金額ですね。（主にクレジットの調査で特に費用が嵩んでしまったようですが）
広まって欲しいような、でも秘密にしておきたようなそんな本ですので、個人的にはこれはこれでいいのですが。
コインが好きな手品人ならまず満足できるものだと思います。
特にトスバニッシュとコイントゥポケットはとても素晴らしいですので、気になった方はぜひ買ってご一読を。
取り合えずほぼ全ての演技動画がアップされてますのでね。まずはそちらを見るといいでしょう。
トスバニッシュは生で見た方が段違いに不思議なので、もしかしたらこれは動画ない方がよかったかもしれませんね。
しゅごい作品集ありがとうございました。
