テジナの泉

手品関係のほぼ自分用備忘録として。

あなたとワルツを

『ユージュアルワルツ』,MilliQ,2021,PDF

 

マジックマーケット2021・春で頒布された、「”レギュラーで行うアニバーサリーワルツ”の考察ノート」とかいうなかなかピンポイントなレクチャーノートです。

こういう一点突破で刺さる人には刺さる、みたいなタイプのものこそもっと増えていいと思います。

たぶん作者ご本人はアニバーサリーワルツという手品が好きなのだと思います。

そして表紙がおしゃれ(でもPDFに表紙がなくてちょっとがっかり。)

 

で、内容ですが、

前半、というか大部分は、アニバーサリーワルツという手品の考察に費やされており、

普通の(ギミックありの)アニバーサリーワルツと、レギュラーのみで行うアニバーサリーワルツとは、そもそもプロットとして違ってしまうのだ、と考えたり、

現象や手順を段階ごとに分割し、それぞれに対する観客の受け取り方を考察しています。

こういったことは、テジナをよく浴びているテジナ人なら大なり小なりなんとなくでも皆考えたことはあるでしょうが、このように文章化してまとめたことは価値があることだと思います。

 

ここに考察され、記載されたことが、仮に自分と考え方が合わなかったとしても、

アニバーサリーワルツに対してこういう分割、考え方ができるのだ、また、別の手品はどうだろうか、こういう考えは……? と、何かの始点になりうるのではないでしょうか。

 

また手順については作者ご本人は「おまけ」のようなものとしていましたが、(特別新しいというわけではありませんが)ワントリックとしてはまとまっているのではないかとも思いました。

 

まあ、これを買うような方はたぶん自分なりの、あるいは既にひとつくらいはなんかよさげな手順を持っていると思いますので、それに考え方を取り入れるなり、再度「分解」し、研究してみたらいいのかも。

 

 

 

 

 

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以降は気になった点です。

 

まず実際の演技映像ですが、このような社会状況で理想の形で撮ることは難しかったとは思いますが、動き自体が少し荒いように思えました。本文で「スタンディングでやれないか」をよく考えるとありましたので、作者ご本人はおそらくよくスタンディングで手品をされるのだろうと思いますが、動画で見る限りでは体がよくふらついていて、セレクトカードを見せるときなどもカードが定まらず落ちつきません。テーマ的にはもう少し落ち着いた演技のほうが合いそうだなぁと個人的には思いました。

 

また、本文途中で「スリップカットフォース」とされているところも、読みながら疑問に思ったのですが、演技動画を見るとやはりスリップカットフォースではないと思いますので、これは表現を変えた方がよさそうです。単にリフルフォースで解決できそうですし。

(もちろん演技動画をみればどのようにしているかはわかるのですが……。)

 

ほかに文章が変なところで改行されていたり、文字数がちょっと変だったりで少し読みづらさもありました(人のこと言えない)。

 

とはいえ500円ですし、これからもこういうピンポイントな感じで自身の考察をつらつら言語化して書いてくれる方が増えてきたら楽しいなぁと思いました。